今日のジャブ


あちこち旅をしていると、やはり少うし変わった話の一つや二つを体験するもので・・・・・いや、なにね、決めつけるわけじゃないんだけど、何かの拍子にぽかっと浮かび上がってきて「あれ?あのときどうだったんだっけ?」と記憶の欠落も手伝って、なんだかつじつまの合わない不思議な話になってしまっているだけだと思うんだけど・・・・・・さて?


俺は本州を旅していた頃は林道のどん詰まりで一人でテントを張る事が多かったのさ。キャンプ道具を積んだトレールバイクで「通り抜けられる林道」を探しに遠征するんだけど、たいてい途中でぷっつり終わっていることがほとんどでね。で、そのぷっつり終わっているところってのは、その「道」が伸びようとしている先を沢が横切っているがために終わっている事が多くって、だいたい重機が方向転換できる程度のちょっとした広場になっていて、まあ泊まるにはなかなか良い場所なのよ♪水に困らないし、車が通りかかるわけでも無いから静かだし。


そーんなある日、暗くなるまでなかなか良い場所が見つからなくて苦労した事があってね、「もういい。もうこの林道で決めちゃおう。ペットボトルに水があるんだから何とかなるっ!だいじょぶ!」と思いながら薄暗くなった林道をどんどん進むわけだ。でもね・・・・そういう時に限ってコーナーを曲がった先にぼーんと「慰霊碑」が建ってたりするわけよ。「うっわー」とか思いながら横切るのよ。なるべくそっちを見ないようにして、ついでにミラーも見えない方向に向けてね♪「そんな恐いんだったら、引き返して別のところに」って思うだろうけどさ、あれなんだ。「暗くなると飯がまずい」の。ヘッドランプで照らすご飯ってどうも美味くないのよ。ましてその日はタイムオーバーで、他を探している時間も無くなった状態だったからさ、うん。仕方なしにその林道の行き止まりで泊まりました。
ま、その夜は何事も無かったんだけどね。話はそこで終わらないから♪


翌朝、荷物を積み込んだバイクに跨がってその林道を引き返すわけだけど、当然ゆうべの慰霊碑の前を通る事になるんだが、その横に高さ1.5メートル、左右に2メートルくらいのでかい平らな岩があってね、その上で「人」が座禅を組んでるんでつよ。真新しい現場用シャツに安全靴をはいて、髪を七三にわけて黒縁メガネをかけた、いかにも監督ふうなちょっと若い兄ちゃんが、こう、きちんとあぐらをかいて。


遠目にその姿が見えていたから「ぎょっ」としてスピード落とし、目を見開いてまじまじと見ながら前を通ってね、いやもちろん、兄ちゃんが動き出そうものなら全っ開で逃げるつもりさ。そうして見た限りでは、目は瞑っているけど生気のある生きた人間そのものだったから、ほっと胸をなで下ろして林道を後にしたんだけどさ・・・・・


その旅が終わってから「あれ?あの時車とか止めてあったっけ???」て気になり出してね・・・いくら頑張っても車があったかどうか思い出せないのよ。よしんば車があるにしても何ゆえ連休のど真ん中に工事の恰好をして朝の6時頃から慰霊碑のそばの岩の上で座禅を組まにゃならんのよ??ってさ、考えるとよくわからない事ばかり。ふもとの村から林道に入ってこの慰霊碑まで1時間はかかるですよ。


「慰霊碑」ってさ・・・林道の慰霊碑ってさ、十中八九、その林道を作る時の事故で亡くなった方がいるから建っているんだよね。実際、碑にそう彫ってあるしね。