子供の頃、自転車に乗って一人で森に向かったことがある。森の入り口で道は細くなり、木々が覆いかぶさってうす暗く、見回せばどこもかしこも真っ暗な闇があって、怖くてそれ以上進めなかった…たぶん、子供ならそれで正常なのだと思う。
大人に連れられてでも、森で遊んだ記憶を持っているだろうか?
北大の人が中心になって企画する、子供たちが真冬の森でのさまざまな遊びを通して、森の仕組みや生き物たちの営み、そして人と森との関わりを学ぶ宿泊体験型野外学習プログラム。
磁石の読み方から始まって木の太さや周長、高さの計り方などのフィールド調査の基礎を織り交ぜ、トドマツとアカエゾマツの違い、ミズナラがどんな木で、シナノキがどんな木で、シラカバとダケカンバの見分け方など一つ一つ、実際にその木を前に説明しながら森の中を楽しく歩いてゆく。
森の中だとダケカンバも比較的まっすぐに生えるので、シラカバなのかダケカンバなのか?素人目に木肌では見分けられないときがある。そういうときは上を見上げて枝を見るといいそうだ。枝が黒いのはシラカバ。わりと先端まで白いのはダケカンバ。(さて、冒頭の木はどっちでしょー?)
また「ガンピ」と呼ばれるこの木の皮は濡れていても火がつくほど火付きがよく、焚き火の火をおこすときに使えるというのは知っていたが、これがいったい、どこまで「剥く」のを許されるのか?わからなかった。
先生に聞いてみたところ「指で剥がして普通に剥ける分はいくらでも剥いてよい」(!!)そうだ。つまり今はかまどのたき付けのために剥きに来るような人もいないので剥き放題!(しないけど)
イヤーやっぱり専門の人に聞くとポンと答えが返ってくるな。
宿舎に帰ったら休憩したあとで夕食までイグルーとスノーランタンを作って遊ぶ。
大人がおおまかに切り出した雪を、みんなで整形しながら組み立てていく。
スノーランタンは、業務用の大きな空き缶で雪の塊にガポッと穴を開けた後、周囲を好きな形に落とすとできあがり。
焚き火があったかい。
あらかじめ作ってあったイグルーの中。雪に囲まれているのに無風状態で想像以上に暖かいのだ。
晩飯の後は正直、ビールを飲んでまったりしたくなる疲れ具合なのだけどまだまだ続く。
これから始めるのはアイス作り。氷に塩をぶっ掛けると溶けながらさらに低温になるのを利用する実験。ペットボトルに牛乳やクリームなどを入れて…
外で買い物袋にたっぷりの雪と塩を入れたなかに先ほどのペットボトルを入れて一生懸命振る。そうしてチャポチャポ言わなくなったら出来上がり。
しばらく外で冷やしておいて、お風呂上がりにいただきます!。みんなおいしそう。
翌日はまた森に入って、前日の「森のたんけん」を応用した「宝探し」。
もらった巻物やヒントのカードを突き合わせてグループごとに作戦会議。
遊びなようでいて、やたらと調べて覚えて考えて実行するのはさすが北大。
風はそれほどないもののドバドバとすごい量の雪が降るなか、巻物の問題をこなしていく子供たち。女の子が測ろうとしているミズナラの幹の太さが尋常でない…
カンジキを履いていなければ腹まで埋まりそうな中をどんどん進んでいく。
しかしここ、目印やコンパスもなしにぶらついたら速攻で遭難するだろうな。
宝の中身はお菓子とか、クルミで作った独楽とか木のおもちゃとか。
お昼のバーベキューのあとはスノーモビル体験。俺も運転したかった…
そばの雪山ではソリ遊び。いやー子供たちほんと元気だ。疲れたーとか言いながら移動は常に駆け足。
そうして最後の授業。感想文を書いたあとは森のたんけん隊隊長、北大准教授の植村先生から「森のたんけん博士」認定証をいただいて、終了。
お疲れさま。きっと家に帰りついた途端に電池が切れたように寝てしまうんじゃないだろうか?
森で遊ぶ、それも北海道の真冬の森で遊ぶ体験なんて、ここで暮らしていてもあまり無い貴重な体験。このように子供たちに植え付けた種がどんなふうに育つかはわからないが、少なくとも早い時期から自然や、物事について正しく考える下地にはなるはず。なにしろ遊びながらも「調べる」「記録する」「疑問を持つ」「考える」「確かめる」という基礎的な事をみっちりやっていたからね。
やー、俺も子供の頃にこんな授業を受けたかった…
「森のたんけん隊」←サイト。
参加する子供たちの住居地はとりたてて限定していない様子。
お問い合わせは…
北海道大学
北方生物圏フィールド科学センター北管理部
名寄市徳田250
電話:01654(2)4264 FAX:01654(3)7522
メール:moritan@fsc.hokudai.ac.jp
名寄市北国博物館
名寄市緑丘222
電話:01654(3)2575 FAX:01654(3)2575
メール:ny-kitahaku@city.nayoro.lg.jp