今日のやる気のないグルメ(美深)


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近年、なぜか人気が出てきている美深町のトロッコ王国のあたりがまた、地図で見てもわかるように、実にトロッコと交差点以外なーんもないところで、「家をやるからここで暮らせ」と言われて放置されても、たいていの人は途方に暮れるばかりで暮らせない。

そこへ羊のチーズを作るために工房を建てた人がいるとの話を聞いて訪れたのは2年くらい前で、チーズを買うついでにお話を聞いてみたら、何だか興味深い話ばかりなので取材。
ええ、けっこう古い話です。
今年のGWは無理だけども、羊がそろってようやく年内に羊のチーズを販売できるところまで来ているので。ぼちぼち紹介。

「チーズ工房 羊飼い」の田中さんは、乳用種の羊を飼育し、その羊でチーズ作りをする事を目標に、現在は牛の原乳でチーズを制作販売中。作っているのは、モッツァレラチーズ・プロヴァチーズの2種類。

「プロヴァチーズ」とは?

「プロヴァチーズ」をごく簡単に説明すると「モッツァレラチーズ」を乾燥、熟成させたチーズのこと。癖が少なくて食べやすく、トーストやフライパンで直接焼くなど、加熱する事で実力を発揮するチーズ。
古くから南イタリアで行われてきた手法「パスタフィラータ法」という製造方法で作られ、「プロヴァ」「カチョカヴァロ」「モッツァレラ」「ストリングス(裂けるチーズ)」は、この製法で作られた兄弟チーズ。その中で「プロヴァチーズ」「カチョカヴァロチーズ」は作られていた地方が違うから形が違うだけで、中身はほぼ同じと言ってもいいらしい。
この「パスタフィラータ法」というのは、大昔、中近東で発明されたのが起源らしく、まとまりづらい水牛の乳をチーズにするために、原乳を固めて水分(ホエー)を抜いた「カード」と呼ばれる状態のときに熱を加えて練り、チーズ内に繊維状の組織を作り出すことでまとまるようにしたのが特徴。

「モッツァレラチーズ」というのは、もともとは「水牛のチーズ」という意味だったそうだ。


チーズ作りは、道具を蒸気殺菌する事から。
雑菌を入れない事が重要なので、工程ごとに道具や設備を洗い、清潔にしながら作業を進める。


原乳を漉す。
ゴミを取り除くのはもちろん、漉されるときの様子でその日のミルクの状態を把握し、その日の工程配分をイメージするのが大きな目的。

バットに入れた量は50L。50Lの牛のミルクから5Kgのチーズができる。
羊のミルクだとチーズ/ミルクの歩留まりが良くて、牛の倍近い量のチーズができる。



ミルクの殺菌作業に入る前に、あらかじめ消毒しておいたビーカーで「スターター」を用意しておく。スターターに使われる乳酸菌は顆粒状になっていて、そのままでは使えないので前もって活性化させておく。

スターターに使われる乳酸菌はたくさんあって、作るチーズの種類や作る人の好みによって違ってくるそうだ。

低温殺菌法で加熱殺菌。
殺菌ができる温度の63℃に上昇するまで20分かける。次に63℃で30分。極端に加熱される部分が出ないようにずっと木べらで撹拌し続ける。


殺菌が終わったら寸胴へ移し、スターターが活発に働く適温まで水で冷却。


寸胴の周囲に着く水の泡は冷却の妨げになるので途中何度か寸胴の表面をなでて泡を取り除く。

適温になったら冷却をやめて、スターターを投入。約1時間そのままにして、乳酸菌が行き渡るのを待つ。乳酸菌だけで固まって、そのままチーズになると思っているひとも多いようだが(=俺)レンネットなるものを入れないとチーズはできない。

レンネットを投入。酢でも牛乳は固まるし牛乳豆腐は酢を入れて作るが、それとはまた全然違う。レンネットは「酸」ではなく、凝乳酵素と呼ばれる「酵素」。
固まったミルクはこのあたりから「カード」と呼ばれる。




カッティング
そのときの状況によるが15分おきくらいに様子を見て、だいたい30分か40分後にカッティングをはじめる。

カッティングの目的はホエー(水分)を抜くため。放置するとまたくっついてしまうのでホエーを抜く作業の間は撹拌を続ける。

撹拌を終え、カードが下に沈殿するまで、1時間静置。

ホエーを除去。

熟成。39℃で湯煎をし、15分に一度反転。


カードの一部を熱湯にいれ、伸び具合をテスト。
状態がいいようなので、すぐさま作業に。


ミリング
包丁で細かく切り、ボールに入れる。


熱湯を注ぐ。


ストレッチング


熱いので木べらでまとめ、餅のようになるまで捏ねる。

木桶に移して冷ましながらさらに捏ねる。
まるで出来の悪い豆腐のような塊だったカードが捏ねるうちに滑らかになり、ニューッと伸びるようになる様は不思議で、見ていて飽きない。同時に「人間はよくこんなものを生み出すな。食べ物に関しては本当に意地汚いよな。」と変な感心をしてしまう(笑)
カードはこの辺りからチーズと呼ばれるようになる。

説明が難しいが、捏ねる事でチーズ内に繊維状の流れができるので、それを整えながら小分けする。

小分けしたチーズは塩水に付け、冷蔵庫で一晩味付け。塩水の塩分は5%程でそれほど高くない。



ひもがけ
翌日、塩水から引き上げてひもがけ。
しばって吊るすための小道具をあらかじめ用意。
ひもはチーズに直接触れるので寸胴にいれ、アルコールをかけてから蒸気で念入りに消毒殺菌。


塩水から取り出したチーズをこのように…

しばって、冷蔵庫内で2日間乾燥。
乾燥させたチーズは熟成庫内で1週間から10日程熟成。


チーズはこれだけの行程を通って店頭に並ぶ。高くもなるわいな…

道内及び美深では極普通に生えている白樺で薫煙したスモークチーズもあり。


美味いすよ。トロッコに乗ったあとでどぞ。
お土産にしないで、独り占めするのが良いです(笑
「チーズ工房 羊飼い」
http://niupu.exblog.jp/
〒098-2208 中川郡美深町仁宇布215-2
営業時間 10:00〜16:00
営業期間 トロッコ王国の開園期間中
       (10月18日まで)
休  日 不定休
お問合せは…
TEL/FAX  01656-2-4025
e - mail  unpeu@lilac.plala.or.jp